ユニリーバの複業は“キャリア”の定義が違う 場所と時間を選べる人事制度とは

ユニリーバは複業を認めていますが、その考え方はとても先進的です。複業（副業）を認める企業は少しずつ増えていますが、実は認めるだけでは企業側にも社員側にもメリットは少ないのです。

もしも、上司や同僚のに十分な説明をせず、理解を得られないまま復業をはじめてしまった場合どうなるでしょうか。

「本業がおろそかにならないか」「労働時間が増えて生産性が落ちないか」「複業に味をしめて退職してしまわないか」といった余計な心配を上司や同僚にかけてしまいかねません。

では、ユニリーバはどのような人事制度で社員の複業と向き合っているのでしょう。

ユニリーバは「生き方」そのものを「キャリア」と呼ぶ

ユニリーバでは複業のことを『パラレルキャリア』と呼ぶそうです。そもそも「キャリア」という言葉は厚生労働省によると以下のように定義されています。

「キャリア」とは、一般に「経歴」、「経験」、「発展」さらには、「関連した職務の連鎖」等と表現され、時間的持続性ないし継続性を持った概念として捉えられる。

厚生労働省ホームページより引用

一方で、ユニリーバでは「キャリア」をどのように捉えているのでしょうか。

ユニリーバ・ジャパン・ホールディングス取締役人事総務本部長の島田由香さんが書籍『複業のトリセツ（著者：染谷昌利）』のインタビューでこのように語っているのが印象的でした。

副業・兼業・パラレルワークなど、いろいろな呼び名がありますが、ユニリーバではパラレルキャリアという呼び方をしています。私たちは単なるひとつの仕事（ワーク）ではなく、働くことに関連した「生き方」そのものを「キャリア」と表現しています。

複業のトリセツ（著者：染谷昌利）より引用

厚生労働省の定義が「職務」や「継続性」といった点にフォーカスしているのに対して、ユニリーバは働くことに関連した「生き方」まで視野を広げています。

ユニリーバほどの大企業でこの考え方が浸透しているのは、複業を実践している人にとっては嬉しい企業文化です。

会社への複業申請は自分を活動を見つめ直すツール

複業（副業）するためには申請書を提出すればOK、という企業が一般的ですが、ユニリーバにとってはこの事務作業にも意味があります。

許可を得るための書類というよりも申請書を書くことで、プロジェクト参加の目的を明らかにしたり、活動に費やす時間を算出できたできる、自分の活動を見直すためのツールとなっています。

複業のトリセツ（著者：染谷昌利）より引用

確かに申請書に記入するためには、客観的に自分の活動を表現する必要がありますよね。この作業がむしろ自分で自分の複業を見つめ直す機会になっているのです。

また、ユニリーバで複業申請するということは、自分の活動をチームや同僚にシェアする役割もになっています。

一瞬「げげ、シェアされるのかよ」と思いますが、ユニリーバは社員の「キャリア」つまり「生き方」そのものを後押しする文化があるので、むしろ社外での活動をやりやすい環境になるのです。すごい。

時間と場所を選べる人事制度『WAA』

複業にこれだけ理解のあるユニリーバですが、さらに素晴らしいことに時間と場所を選んで仕事ができる人事制度『WAA（Work from Anywhere & Anytime　通称「ワー」）』というのがあります。

これはまさにいつでもどこでも働ける制度で、時間は「平日の6時〜21時ならいつでも」らしいです。

僕のようにシェアオフィスを借りて一人で集中して仕事することもできますし、家で仕事の合間に家事や子育てをすることもできますね。

サボる社員が出るのでは…と心配になりますが、ユニリーバは「心配」ではなく「信頼」をベースにして人事制度を作っているとのこと。

どんな企業でも真似できるシロモノではありませんが、性善説で働く方がストレスが少ないのは間違いないと思います。

複業実践者の声がたっぷり『複業のトリセツ』

僕のようなフリーランスはあちこちの会社から別々のミッションを受けて仕事をもらうのでナチュラルに複業できていますが、企業の複業制度はまだまだこれから。

引用にも使った書籍『複業のトリセツ』は、実際に複業を取り入れている企業の生きた意見がミッチリ詰まっていて、まさに“トリセツ”という感じです。

先駆者の声を聞いて、真似できるところは取り入れていくスタイルの人にとってはナイスな本です。