複業

会社員?フリーランス?複業時代の『ギルド型組織』ってなんだ

投稿日:

会社員?フリーランス?複業時代の『ギルド型組織』ってなんだ

「○○組織」ってむちゃくちゃいっぱいありますよね。ティール組織とかホラクラシー型組織とかアジャイル型組織とか…。

フリーランスの僕に組織論はあまり関係ないな…と思っていた矢先に、『ギルド型組織』なる言葉が耳に飛び込んで来ました。

ギルド型組織はフリーランスや複業実践者にとって新たな選択肢となりそうです。

ギルド型組織はフリーランスと企業のいいとこ取り

ギルド型組織はフリーランスと企業のいいとこ取り

『ギルド型組織』という言葉はまだちゃんと定義されていないようです。組織を運営していく中で「これってギルドっぽいよね」ってなったので、流れでギルド型組織と呼ばれるようになったのでしょう。

そもそもギルドとはどういう意味なのでしょうか。

ギルド(英: Guild、独: Zunft、伊: Arti)は、中世より近世にかけて西欧諸都市において商工業者の間で結成された各種の職業別組合。商人ギルド・手工業ギルド(同職ギルド)などに区分される。

引用:ギルド(Wikipedia)

要するに、カテゴリーで区分されたスペシャリストが集まる組合ってことですね。ギルドが窓口となって仕事を受注して、適任者を派遣する仕事のスタイルです。

このワークスタイルがギルド型組織にも当てはまるのです。

働き手はフリーランスのように身軽ですが、組織としては企業のような機能を持っています。

ギルド型組織とはいわば、フリーランスと企業のいいとこ取りな組織と言えます

仕事内容に応じてメンバーを構成できる

ギルド型組織では、組織で仕事を受けますが、アサインするメンバーはその都度最適になるようにアレンジします。一般企業のように「この仕事はこのチーム」というアサインとは異なります

アサインされるのが経営者か、社員か、フリーランスかは関係なく、スキルセットや適正に応じて組み替えるのです。

例えば、Webサイト制作の仕事を受注したとします。一般企業だと社員の中からメンバーをアサインしなければいけないので、リソースが空いているエンジニアが仮に「Webはちょっと苦手…」だったとしても、他にリソースがないのでアサインせざるを得ません。

ギルド型組織の場合、企業の枠組みにとらわれずにチームビルディングできるので、Webが得意なフリーランスのエンジニアをアサインすればOKとなります。

個人よりも市場での存在感が出る

フリーランスの典型的な悩みとして、個人では市場で存在感が出しにくいという問題があります。良い仕事をして成果物を納品しても、評価されるのはクライアントのプロダクトです。

もちろんクライアントからは感謝されるものの、マーケットでの存在感はたかが知れています。

その点、ギルド型組織はギルドとして仕事を受注して、ギルドとして成果物を納品します。

デザイナーやエンジニアがチームとして力をあわせて作った成果物が評価されるわけですから、個人での活動よりもマーケットに対しての存在感は段違いです

マーケットからの評価はギルドに溜まっていくので、ブランディングとしても効果が高いのです。

会社員のように活動を制限されない

ギルドで働く人にとって、もっとも大きなメリットは会社ほど活動を制限されないことです。基本的に、ギルドに所属する人材は、ギルド以外からも仕事を得ています。

そもそも、ギルドにとって雇用形態はそれほど大きな意味を持ちません。経営者であろうが、正社員・契約社員であろうが、フリーランスであろうが、自分の適性に合った仕事でギルドに貢献することが最大の目的です

複業(副業)可能な会社の正社員として働くかたわらでギルドに所属する人もいますし、個人として仕事をこなすかたわらでギルドの仕事もこなす人もいます。

強すぎない仲間意識が生まれる

僕もフリーランスで活動していると、不意に孤独を感じる時があります。

ストレスなく自分のペースで働けるのはフリーランスの利点ではありますが、仕事の成果や、ものづくりの工程を共有しあえる仲間がいないのは一抹の寂しさを覚えるものです。

ギルドは個人の集まりではありますが、仕事の成果やものづくりの工程を共有しあえる仲間です

もちろん会社員にとって同僚は仕事における仲間ですが、同じ会社に勤めている限り決して関係が解消できないので、繋がりが強すぎるというデメリットがあります。

強すぎず弱すぎない関係性を育めることは、ギルド型組織を語るうえで外せないメリットです。

ギルド型を実践している組織

ギルド型を実践している組織

ギルド型を実践している組織をいくつか紹介します。

いずれもアレコレ組織のあり方を変えながらベストなギルドの運営を模索しているようなので、あなたがこの記事を読んでいる時には情報は古くなっているかもしれませんが…笑

ギルド型組織はそのくらいフレキシブルな組織ってとこですね。

THE GUILD(ザ・ギルド)

THE GUILD(ザ・ギルド)はUI/UXのスペシャリストとして知られる深津貴之さん(@fladdict)が代表を務める株式会社です。

THE GUILDの設立のきっかけについて、深津さんはこのように話しています。

フリーランスでアプリやサービスの設計を手掛ける中で、僕が個人的に一番大きな課題だと思っていたのは、デザイナーであれ、エンジニアであれ、もっとビジネスの上流からアクセス出来ればより価値を発揮できるはずなのに、その道がないということだったんです。

引用:メンバーに訊くTHE GUILDの今とこれから – Inside THE GUILD 後編

スペシャリストがチームとして集まることでスケールメリットを生み出し、さらに経験や情報も共有できる組織を作りたかったんですね。

組織は基本的にフリーランスで構成されていて、内訳は経営に関わる「ボードメンバー」と、経営には関わらない人材として「メンバー」が在籍しています。試験的に社員も雇っているそうです。

受諾する仕事はアプリやWebサービスの制作やコンサルが多いのですが、上流工程からプロジェクトに参加しているため、よりクライアントのニーズに踏み入った仕事ができているようです

最近はコンサルティングに近いお仕事も増えてきていて。コンサルティングを含め、サービスの企画から開発まで請け負い、その後のグロースまで一気通貫でできるのは私たちのユニークなところなのかなと思っています。

引用:複業解禁の今こそ知りたい、個の弱みを補完する「ギルド型組織」とは

まさにギルドという形を取ることで、フリーランスでは踏み込めなかった領域の仕事を獲得できているのです。

THE GUILD:https://theguild.jp/

STANDARD(スタンダード)

もともとUXデザインファームという会社組織だったSTANDARD(スタンダード)は2018年1月から社員は全員フリーランスという形をとるようになりました。

THE GUILDと同じように会社という形を保ちつつ、所属しているのはフリーランスという構造ですね。

創業者の鈴木 健一さん(@suk)はマーケティング企業のFICCのデザイナーでしたが、転職を考えていたところFICCから出資のオファーを受けます。

『使われるものを作りたい』と考えた鈴木氏は、よりサービスへコミットできる会社への転職を考えた。しかし、経営層に辞意を伝えたところ、『やりたいことと意志があるなら出資するよ』という意外なオファーを受ける。

引用:『デザイナーが課題と出会うための場所』としてのギルド型組織へ。STANDARDが考えるデザインファームの役割

このような経緯で、STANDARDはFICCグループとして発足しました。

では、なぜSTANDARDはギルド型組織に移行したのでしょうか。鈴木さんが打開したかった課題は受託ビジネスの経営者ならば多くの人がぶつかる壁でした。

『受託ビジネスのジレンマ』というテーマが出てきました。通常、我々のクライアントがデザイン会社へ支払う報酬には、純粋な人件費・経費に加え、会社としての利益が上乗せされています。ゆえに費用は上がり、スタートアップや事業の初期フェーズなど、予算的に余裕があるわけではない場面では、依頼するハードルが高くなる。しかし、事業の初期段階でデザインが関わることはサービスや企業にとって大きな価値になる。この課題を解決できないかという問いが出たのがきっかけでした。

その結果、STANDARDは会社としての機能を「実績などの情報発信の集約」「案件の問い合わせ窓口機能」「バックオフィスのサポート」の3つに絞ります。

クライアントにとっては、制作会社に依頼する感覚と同じですが、費用はフリーランスと同じなのでお得感があるというわけです

ちなみに、代表の鈴木さんはCXプラットフォーム『KARTE』を提供するPLAIDという会社でUIデザイナーをしています。経営者でありながら、フリーランスのスペシャリストでもある、まさに複業的なワークスタイルですね。

STANDARD:http://www.standardinc.jp/

PLAID:https://plaid.co.jp/

KARTE:https://karte.io/

ランサーズの「ギルド」スキーム

2019年春のリリース予定ですが、ランサーズもエンタープライズ向けに「ギルド」スキームを開発していることを発表しています

フリーランスがセキュリティ・コンプライアンス・賠償責任といった高度なエンタープライズニーズに対応していくための「ギルド」スキームを開発し、2019年春のリリースに向けて推進してまいります。

(中略)

本プロジェクトは、ランサーズ正社員とフリーランスのコラボレーションによって事業を推進するモデルケースとして取り組んでまいります。ランサーズは、事業・組織共にオープンタレントの活用を実現し、個のエンパワーメントを推進します。

引用:フリーランスCMOに許 直人氏が就任

どういう立て付けになるかはまだ不明ですが、ランサーズという実績抜群のプラットフォーマーからギルド型組織が生まれるとなると期待してしまいます。

イケダハヤトさんの『ブロガーズギルド』

ブロガーのイケダハヤトさんが運営しているオンラインサロン『ブロガーズギルド』もギルド型組織のひとつでしょう。

このサロン、ちょいちょい炎上したり現在は新規会員を受け付けてなかったりと、ハタから見たら怪しく見えますが、未知の領域に超高速でチャレンジを繰り返すのがイケハヤさんの真骨頂だと思ってるので、僕は陰ながら応援しています。

ブロガーズギルドはオンラインサロンなので、会社という形態ではありません。参加者はクローズドのDiscordインスタンスに招待され、そこでやりとりをします。僕はサロン会員じゃないので詳しいことはわかりませんが、ざっと調べたところ活動内容は以下のようです。

  • ブログ運営のノウハウ共有
  • 会員向け音声コンテンツの配信
  • サービスのレビューをする/レビューを受ける
  • 仕事・協力の依頼や受注

参加者は月額料金を払ってサロン会員になっているので、積極的にGIVEする人が多いのではと推測しております。

複業時代にアンテナを張る

この記事を読んだ人はある程度、働き方についてアンテナを張っている人だと思います。

僕もそうですが、ギルド型組織を実践する人のインタビューなどを読むと「なるほど。理にかなっている」とは思うんですよね。

でも、「じゃあ自分はどうするのか?」と考えて、考えた通りに実行できる人はなかなかいません。でもそれは悪いことじゃないし、能力の有無も関係ないと思います。

普段よりちょっと働き方に関するアンテナを張っておけば、新鮮な情報を収集して自分のワークスタイルに取り入れられるはずです。

僕が読んで参考になった複業の本のリンクを貼っておきます。

関連キーワード

-複業
-,

この記事を書いた人

MULTINESS編集長。『漂流男子』『働きたくない代表』とか言われている。ライブドア、LINE、サイバーエージェントを経て福岡県糸島市をメインの拠点に東京、名古屋を行ったり来たり。バンコクに拠点作りたい。