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【元広報が解説】『こうち二段階移住』に学ぶ高知の移住促進PR戦略

高知の移住促進のイメージ戦略がイケているので紹介します。

高知市は『2段階移住』と呼ばれる移住の方法を推奨しているのですが、地味なテーマにも関わらず全国紙にも取り上げられるほどのPR巧者です。

僕も地方のスタートアップで広報の経験があるので、地方発のプロダクトが全国で取り上げられる事の難しさは知っています。

高知市の何が凄いのか、元広報の僕の知見も織り交ぜつつ分析してみました。

『こうち二段階移住』とは?

高知市にまずは引っ越す計画的な移住

高知市がPRする『こうち段階移住』とは、高知県の移住者を増やすための施策。

いきなりエクストリームな田舎に引っ越してミスマッチを引き起こさないために、まずは都市機能の充実した高知市に移住してくださいね、というキャンペーンです。

条件を満たせば最大22万円の補助金が受けられるという太っ腹っぷり。高知の本気度がうかがえます。

高知市では、県内への二段階移住を考えている方を対象に、一段階目となる高知市でのお試し移住費用等を補助しています。補助対象者は、高知市が発行する「すてっぷ移住パスポート」を手に、県内市町村の移住相談窓口を3か所以上巡っていただき、スタンプを集めると最大22万円を高知市が補助します

引用:PRTIMES

僕も福岡県糸島市の比較的都市機能がそろった地域に移住したので、二段階移住の有用性は身にしみて感じます。

その辺りの移住に関する知見はこちらの記事にまとめているのでどうぞ。

【地方移住者が教える】失敗しない家選びの二大鉄則

こうち二段階移住のPR戦略の何がスゴい?

このPR戦略、広報経験のある僕から見て、なかなかイケてると思うのです。結論から言うと、やるべき事をしっかりやって、届けたい人に届けているのがスゴいです

シンプルな理由なのですが、しっかりと定石をおさえた広報戦略ができている自治体ってあまりありません。

切り口を『二段階移住』に絞る

移住促進のPRの悪い例として、自治体側が知ってほしい部分ばかりアピールしてしまうケースがあります。

例えばこけしが有名な地域だったとして、こけしのゆるキャラを作ってゆるキャラグランプリに出場させても、それって移住検討者に届くメッセージにはなりませんよね。

一方で高知市の二段階移住のPRは移住検討者の目線に立ったメリットを提示しています。

二段階移住はリスクが少なく、さらに移住検討のための費用は一部補助してもらえる。検討してる人にとっては魅力的なオファーです。

しっかりリリースを出す

定石の中でも特に定石ですが、『こうち二段階移住』はちゃんとPR TIMESでプレスリリースを打っています。

プレスを打たないと誰にも知ってもらえないので、問い合わせは来ないし、メディアも取り上げてくれません。

しっかりコンテンツを用意する

PR TIMESは便利なツールですが、プレスを打つだけでは芸がありません。ちゃんと興味を持ってもらえる仕掛けが必要です。

高知市はこのために『こうち二段階移住特設サイト』を用意しています。デザインもモダンで、若い世代に無視されにくいものになっています。

さらに、定番コンテンツの移住者インタビューもたっぷり掲載されています

さらにさらに、シュールなアニメーションが印象的な動画も作って、流行りの動画マーケティングにもちゃっかり乗っかっています。(バイラルするほど面白くはなかったけど)

動画は『下調べもせずに地方移住決めた夫婦の話』のアニメと移住者インタビューの2部構成。

まずは地元のメディアに取り上げてもらう

プレスを打ったら、次はメディアに取り上げてもらうことが重要です。なにせ地方移住という地味なトピックなので、いきなりマスメディアに取り上げてもらうのは現実的ではありません

そこで高知市はまず地元のメディアに取り上げてもらう戦略をとっています。

見事にPR TIMESのリリースをフックに二段階移住の話題が高知新聞に掲載されています。

地元のメディアのミッションはだいたい地元を盛り上げる事なので、地方活性化したい自治体と相性良いんですよね。

全国紙に取り上げてもらう

高知新聞はローカルメディアとはいえ、高知では権威あるメディアですから、取り上げられた実績があると無いとでは大違いです。

きっと高知市の広報スタッフも、高知新聞の実績を持って全国紙にアピールしたはずです。

そういう努力(?)が功を奏して、バッチリ全国紙にも掲載されています。広報として評価されるべき仕事っぷりです。

県と市のシームレスな連携

高知市のPRとしてキャンペーンは展開していますが、関わっている自治体は高知市だけではありません。

高知県の協力のもと、他の市区町村ともシームレスに連携しているのがスゴいです。

あるあるなのですが、県と市は別々の組織なので、利害関係が一致しないと協力しない傾向があります

一般人からしたら知らねーよって話なのですが、県が主催するイベントについて市に問い合わせてもあしらわれる場合もしばしば。

その点、高知市は高知県もその他の市区町村もちゃんと巻き込んだ上でキャンペーンを展開していて偉いです。難易度が高いプロジェクト運営だったのかなあ、と想像します。

キャンペーンの成果までPRしてくれたら最高

キャンペーンは現在進行形ですが、一区切りついたらキャンペーンの成果も公表してくれると嬉しいですね。

高知に移住を検討していなくても、しっかりキャンペーンを成功させる自治体なんだな、と思って印象がよくなりますよね。