若者に広がる二拠点生活『デュアラー』や、家を持たない『アドレスホッパー』にとって有力な選択肢となる住まいのサブスク、いわゆる“住み放題サービス”が立て続けにリリースされています。
ホステルライフ、HafH(ハフ)、トークンハウス、CARAVAN(キャラバン)、ADDress、いずれもイケてるチームがイケてるサービスを打ち出していますが、現時点ではADDressが本格派として存在感を増しています。
クラウドファンディングで目標金額の5倍の1000万円を集めていることからも期待がうかがえるADDress。そのしたたかな戦略を読み解いてみます。
もくじ
22の企業や自治体との取り組みを発表
ADDressは2月に戦略発表会を実施していて、この内容が想像を絶する情報量でした。
定額で全国住み放題の多拠点コリビング(co-living)サービス「ADDress」が戦略発表。第一弾は11拠点。会員募集クラウドファンディングも開始!(PR TIMES)
第一段法人会員やパートナー、そして提携先企業、連携シェアサービスなど、22の企業や組織、自治体の名前が挙がっています。
ザクっとまとめると以下のような内容です
【第一弾法人会員】
- 株式会社ガイアックス
- 株式会社CAMPFIRE
- 認定NPO法人フローレンス
- ユニリーバ・ジャパン・ホールディングス株式会社(トライアル利用)
- 株式会社リクルート住まいカンパニー
【家具、アメニティ提供パートナー】
- LEAF&BOTANICS(松山油脂株式会社):ADDress物件にアメニティグッズを提供
- コアラマットレス(Koala Sleep Japan KK):ADDress物件にベッドを提供
- VUILD株式会社:ADDress物件のテーブル、椅子等製作
【泊まり放題パートナー】
- 一般社団法人ハンモサーフィン協会:月4.5万円で、全国19拠点のハンモサーフィンも泊まり放題
- Little Japan(NPO法人芸術家の村):月5万円で、日曜-木曜日は都心のゲストハウスも泊まり放題
【物件調達パートナー】
- 株式会社カチタス:カチタスの扱う中古物件をADDress物件として提供
- NPO法人離島経済新聞:情報網を活用し、ADDressの離島物件を開拓
- R不動産:全国のR不動産がADDress物件を開拓
【地方公共団体】
- 滋賀県大津市:大津市内の琵琶湖畔の遊休企業保養所活用し、関係人口構築
【モビリティパートナー】
- ANAホールディングス株式会社:空席/空リソースを活用し、多拠点生活/シェアエコツーリズムの推進
【連携シェアサービス】
- スペースマーケット:ADDress物件のリビング等共有スペースの時間貸し活用。及びADDress家守によるスペースマーケット対象物件開拓。
- akippa:ADDress物件の駐車場をシェア。
- AsMama:地域の子育てサポート及びADDressホッパーの子育てサポート。
- TABICA(株式会社ガイアックス):ADDress物件地域の暮らしの体験を提供し、まちの魅力を発信。
- REALBBQ(:ADDress物件をBBQパークに。
- みまもりあいプロジェクト(一般社団法人セーフティネットリンケージ):ADDressと連携し地域のみまもりあいネットワークの拠点構築。
- MIDORI.so:ADDressのコワーキングスペースのコミュニテイマネージャ育成等運営サポート。
プレスリリースでは、ひとつひとつの提携の目的などは詳細に書かれていないのですが、想像を巡らせてみるとかなり壮大なスケールで戦略を展開していることがわかります。
キモとなりそうな取り組みを深掘りしてみましょう。
『デュアラー』仕掛けるリクルート住まいカンパニー
第一弾の法人会員にリクルート住まいカンパニーが名を連ねています。
何を隠そう、このリクルート住まいカンパニーは『デュアラー』ブームの火付け役…というか言い出しっぺなのです。
リクルートが発表した「2019年トレンド予測」にデュアラーが登場して話題となりました。
しかし、このトレンド予測は“予測”というよりも“宣言”に近いのです。リクルートはトレンド予測で発表したワードを流行させるために、巨額のマーケティング費用を投じています。
つまり「2019年はデュアラーが来るぜ!」と宣言してしまった手前、頑張ってデュアラーを活性化させる必要があるのです。
その言い出しっぺであるリクルート住まいカンパニーがADDressの法人会員の第一弾となっている、ということはADDressがデュアラーブームの火付け役になり得るポテンシャルを感じているからに他なりません。
『ホステルライフ』は競合ではなく共存
イケてる住み放題サービスといえば、ホステルライフを思い浮かべる人も多いはずです。
ナイスな広報戦略によってメディアに露出しまくっているので、波に乗っているイメージがあります。
一見すると、ADDressとホステルライフは競合になるような気がしますが、ADDressの戦略発表でパートナーとして名を連ねました。
競合ではなく、共存するという意味だと捉えることができるでしょう。
ADDressはこのパートナーシップで東京の拠点を手厚くしたい狙いが見えます。
『R不動産』など、空き家リノベ企業とのシナジー
ADDressが解決した課題のひとつが空き家問題です。日本中に空き家が多くあり、これからも増えていくと予測されています。
「それらの空き家を有効活用する」と宣言するのは簡単ですが、実際に空き家をADDressの拠点に加えるまでの手間は相当なものでしょう。
空き家の数は2033年に2170万戸になるとも言われているので、その中から条件に当てはまる物件を見つけて、大家さんと交渉して、リノベして、スタッフを雇って…などなど、とにかくやることが多そうです。
ADDressは2030年の目標を「物件数20万、100万室、利用者100万人」と定めています。この高い目標をクリアするためには空き家開拓&リノベのプロ集団との取り組みが不可欠です。
早い段階で大手のR不動産などと手を組めたのは意味が大きいです。
新ジャンル『遊休企業保養所』の活用
僕が今回の戦略発表で胸が踊ったワードは「大津市内の琵琶湖畔の遊休企業保養所活用し、関係人口構築」です。
地方には企業がかつて使っていたどデカイ保養所がたくさんあります。テニスが併設されていたり、スキー場と近かったりすることが多いイメージです。
このような有給保養所がADDressの手で素敵に復活したらめっちゃ楽しそうですよね。
大津市との取り組みは琵琶湖畔で実施されるようなので、SUPや釣りなどが楽しめるようになるのでしょうか。想像しただけでワクワクします。
『ANA』提携で飛行機代が割引されるかも?
しれっとANAとパートナーシップを結んでいるのがスゴいです。ANAとどういう取り組みをするのか、東洋経済のインタビューで代表の佐別当さんがチラッと構想を語ってくれています。
全日本空輸(ANA)と提携したのはまさにそこが狙い。日本の地方都市は飛行機に乗れば1~2時間で行けるところが多くある。もちろんサブスクリプション(定額利用サービス)モデルで、飛行機乗り放題のサービスがあれば最高だが、そこまでいかなくても月1回1往復できる航空チケット付きのサービスを用意できれば、もっと手軽に全国を行き来できる。
今、ANAと実証実験を進めており、半年以内にはシステム開発も含めて実現したい。また鉄道会社など、ほかの業者とも話し合いを進めている。
おおお…ADDressの定額利用料に飛行機乗り放題サービスもコミコミになる可能性もワンチャンありそうです。続報を楽しみに待ちましょう。
場所作りのコア『コミュニティマネージャ』の育成
ADDressが抜かりないのは、場所づくりのプロである『コミュニティマネージャ』の育成にも注力している点です。
『MIDORI.so(みどり荘)』というコワーキングスペースを運営している企業がコミュニティマネージャの育成サポートを担います。
僕もコワーキングスペースを利用しているので実感するのですが、素敵なコミュニティマネージャがいるといないとでは、結構な差があります。
コミュニティマネージャは単なる店番や御用聞きではなく、コミュニティをなんとなくいい感じにしてる存在です。(うまく説明できないんですが)
コミュニティマネージャを介して、入居者同士が自然につながっていけるのです。
アドレスホッパー 、デュアラーがどう利用するか
家を持たないアドレスホッパーならば、月額4万円で全国住み放題は魅力的なオファーになります。
一方で、ADDressがメインのターゲットにしているのは、年収600万〜800万円の地方居住者で、セカンドハウス的な位置付けでADDressを利用する人たちです。
ホームはドシッと構えつつ、別の拠点を持つことはリクルートの定義するデュアラーとも近い層がターゲットになりそうです。
アドレスホッパーやデュアラーが実際にADDressを利用した時にどんなリアクションをするのか、今から楽しみです。
住み放題サービスを利用している人のTwitterを探してフォローしておかないと。
ADDressホームページ:https://address.love/