多拠点生活を実践する理由は人それぞれ。ですが、必ず付きまとうのは「仕事をどうするか」という問題。この問題は人それぞれなので正解はありませんが、少しでもクリアするためには多拠点生活を経験している人の話を多くインプットすることが重要です。
ジャーナリストで作家の佐々木俊尚さんと、旅作家の小林希さんが対談形式で多拠点生活について語っている書籍『多拠点生活のススメ(幻冬社)』には、仕事に関するヒントが体験に基づいて数多く紹介されています。
仕事の枠を広げるのは出会う人
佐々木さんは3拠点生活を始めて、仕事に対する姿勢が変わったそうです。それまでは「自分は唯一無比である」とおごり高ぶった気持ちがあったものの、多拠点生活によって出会う人が増えたことによって心境に変化が出てきたようです。
結局なんだかんだ自分の仕事の枠を広げるのは何かって言うと、出会う人なんだよね。最終的に。だから積極的に人に会う。いろんな人と出会うことによって自分の知らない世界にまで自分の領域が広がっていく感じ。それがすごく面白いなって。
『多拠点生活のススメ』より引用
自分を安売りしないと言うのはフリーランスや起業家にとっては鉄則とされていますが、その価値観を変えさせた多拠点での人との出会いだったんですね。
多拠点生活によって「弱いつながり」を築く
一拠点居住の息苦しさの原因のひとつは「会社(組織)との強すぎるつながり」ではないでしょうか。家と会社の往復を続けていくと、その場所で得られる情報や人間関係は強くなっていきますが、一方でそれをしがらみだと感じてしまいます。
佐々木さんはこれからの移動の時代に大事なのは「弱いつながり」だと言います。
つながりが薄い状態が普通であるってのを保って、その薄い状態をたくさん維持しとくってのが今の移動の時代には重要なんじゃないかなって思うんですよね。完全に切れちゃうのは良くない。(中略)日頃接触のない人のほうが、自分にはない新鮮な情報を持ってる可能性が高い。
『多拠点生活のススメ』より引用
「弱いつながり」で得た新鮮な情報は仕事にも良い影響があるはずです。例えば、都心で「優秀な漁師と出会いたい」と思ってもハードルが高いですが、田舎にも拠点を持っていれば思い当たる人物がいるかもしれませんよね。
多拠点生活は定年後の仕事のリスクヘッジにもなる
一拠点の生活で「強すぎるつながり」だけしか持っていないまま定年退職することはリスクだと佐々木さんは警鐘を鳴らします。
1ヶ所に居住していると強い繋がりに陥りがちなので、弱いつながりがどんどん希薄になっていく。だって終身雇用の会社に勤めていると、どんどん他の会社の人と付き合えなくなって、50歳くらいになったら社内にしか友達がいないおじさんになってしまう。これが定年退職するとどうなるかって言うと、することがなくて奥さんの後をくっついていくだけになってしまう。
『多拠点生活のススメ』より引用
会社と家族以外のつながりを持っていないと、退職後に友達がいなくてやることがなくなってしまう。怖いですね。これからは退職後も働くことが普通になりますから、弱くて広いつながりがあるとひょんな拍子に仕事がもらえたりするので、仕事の面でもリスクヘッジになります。
多拠点生活は週末だけでも始められる
僕も多拠点を自称していますが、現状だと【福岡9】:【東京0.5】:【名古屋0.5】くらいの割合です。福岡一拠点とも捉えられますが、福岡、東京、名古屋にそれぞれつながりを持っているので、情報の鮮度は高いです。
隔週で土日にゲストハウス巡りをするだけでも、それは多拠点生活の始まりです。まずは一歩踏み出してみてはどうでしょうか!