旅と仕事

新たなトレンド「コリビング(Co-living)」は生活と仕事のハイブリッド

投稿日:2019年6月4日 更新日:

WeLiveこだわりの家具

にわかに注目が集まっている『コリビング(Co-living)』というライフスタイルが日本でも広まりつつあります。

デュアラーやアドレスホッパーなどライフスタイルやワークスタイルに新しい風が吹き荒れていますが、どれも単なるトレンドではなく支持される理由がちゃんとあります。

コリビングは個人で働く人にとって新たなコミュニティになり得るものです。仕事と生活の境目が曖昧な人にとっては魅力的な選択肢だと思います。

新しい概念なので国や人によって言葉の解釈が異なりますが、僕なりの解説をしていきます。

仲間と暮らしながら働く「コリビング(Co-living)」とは?

コリビングとは、ざっくり言うとシェアハウスのように共に暮らし、コワーキングスペースのように様々な職業の人と共に働く施設のことです。

今までは働く場所と暮らす場所を区別するのが一般的でしたが、ライフスタイルが多様化するにつれて職場と家が近いことに合理的なメリットを感じる人も増えてきたんだと思います。(筆者の勝手な解釈です)

自宅がオフィスである僕も実感しますが「記事を一本書いたら昼寝」「オンラインミーティングの前に風呂」といった具合に、ONとOFFをシームレスに切り替えられるのは嬉しいです。

しかも、コリビング施設ならばおしゃべりする相手がいます。これは地味に大きいメリットです。

僕は毎日自宅で一人っきり作業していると気が狂いそうになることがありますが、施設内の友人や顔見知りさんと軽く雑談をできると社会性が保てます。

在宅ワークの利便性を担保しつつ、緩やかな横の繋がりを持てるのがコリビングです。

コリビング、シェアハウス、コワーキングスペースの違い

キッチリと線引きをする必要があるかわかりませんが、ざっくり区別すると以下のようになるでしょうか。

  • コリビング:ワークスペースのあるシェアハウス or ゲストハウスを利用するライフスタイル
  • シェアハウス:ひとつの家に複数人で済む、もしくは共用スペースがある物件
  • コワーキングスペース:複数の個人や組織がひとつのオフィスフロアをシェアする空間

たぶんこれ以外にも要素はあると思いますが、日本ではこのようなニュアンスで使われています。

世界で台頭するコリビングサービス

共に暮らし、働くスタイルを「コリビング」と名付けて文化として根付かせた海外のサービスをいくつか紹介します。

日本にも昔から同様のサービスはあったでしょうが、「コリビング」とネーミングされたライフスタイルは海外からやってきたトレンドです。

トレンドの火付け役となった面白いコリビングサービスをいくつか紹介します。

Common

Commonのホームページ

アメリカの主要都市でコリビングサービスを展開する『Common(コモン)』。

CEOのブラッド・ハーグリーブス氏はコリビングにおいて重要な点について「我々がやろうとしていることの多くは、他人と暮らす恩恵を維持し、建物全体としてコミュニティーに適応できるレイアウトを再考することだ」と語っています。

レイアウトはアメリカの学生寮のようになっていて、キッチン、リビング、ダイニングは広々とした共有スペースになっています。コミュニケーションが発生しやすい場所づくりをしようとすると、学生寮のようになるというのは興味深いですね。

Commonの料金表

ニューヨークの物件の中で最も家賃の安いもので14万円ほどです。しかし、光熱費や通信費などを加味するとお得感のある価格のようです。

Commonのベッドルーム

Commonのベッドルーム

Commonのキッチン

Commonのキッチン

Commonのリビング

Commonのリビング

ニューヨークで最も安い物件でもこのクオリティです。毎週クリーニングしてくれるサービスがついているので、共有スペースは常に整理された状態なのもうれしいポイント。

WeWork(We Live)

WeLiveのホームページ

コワーキングスペース大手のWeWorkが提供するコリビングサービス『WeLive』の存在も外せません。

WeLiveのサービス

24時間軽食が食べられるサービスや、オンラインでのフィットネススタジオなど、ユニークなサービスはコワーキングスペース運営のノウハウがぎゅっと詰まっているのがわかります。

常に軽食が食べられるWeLiveのキッチン

常に軽食が食べられるキッチン

内装やファシリティなどもハイセンスで、WeWorkの築き上げたブランドパワーに一日の長を感じます。

WeLiveこだわりの家具

こだわりの家具

ワシントンDCエリアのワンルーム物件だと、家賃20万円から利用可能です。

Ollie

ollieのホームページ

Ollie(オリー)』はアメリカを中心に展開していますが、特徴はアメニティの豊富さです。WiFiやイベントの紹介などはもちろん、ホテル並みのサービスが受けられます。

共同ラウンジ、プール、ジム、スパエリア、ジュースバー、ルーフデッキなどなど…普通の一人暮らしではまず体験できないような施設が、家賃にオールインクルーシブとなっています。さらに家具はすべてイタリア製というこだわりよう。

現在利用できる拠点はニューヨークとピッツバーグがあり、近年中にロサンゼルスとボストンの拠点をオープン予定。

家賃は、ニューヨークのマンハッタンだとワンルームの間取りで月に30万円ほど。めちゃくちゃ高く感じますが、このあたりのワンルームの相場が2000ドル~4000ドルとのことなので、相場の範囲内。さらにアメニティや光熱費を考えるとお得感すらあります。

Ollieのキッチン

Ollieのキッチン

Ollieのベッドルーム

Ollieのベッドルーム

Ollieのテラス

Ollieのテラス

The Collective(Old Oak)

オールドオークのイメージ

AFPの記事でも「コリビングサービスの草分け」と評されるように、現在のコリビングのあり方を先んじて取り入れたのがThe Collectivemの運営するロンドンの『Old Oak(オールドオーク)』。

人とのつながりに主眼を置いたザ・コリビングサービスといった施設です。

oldork-inckude

施設利用費にはスポーツジム利用やイベント参加、部屋のクリーニングもふくまれています。

部屋のタイプは基本的にワンルームで、キッチンが共用の「Ensuite」かキッチンも個別になった「Studio」の2種類があります。

ensuiteのイメージ

キッチンが共用のensuite

studio

個別キッチンのあるstudio

最も安いプランで月額15万円と高額な印象ですが、ロンドン市街の1ベッドルームの部屋の平均家賃は23万円とのことなので、ロンドンの若者にはちょうどいい選択肢になりそうです。

日本と世界の「コリビング」はちょっと違う?

アメリカやイギリスで盛り上がっているコリビングのムーブメントが、日本にも上陸してきています。

ただ、日本と海外でちょっとニュアンスが違うように感じます。上手に説明できませんが、日本のコリビングサービスは「宿泊施設っぽさ」があるのが特徴です。

上記に紹介した海外のコリビングの入居者は、まさに施設内に「住んでいる」人だと思うのですが、日本での利用者はコリビングサービスとは別に、自分の家も持っているケースが多いです。

ガチでコリビング施設に”だけ”住んでいる人ってほとんどいないのではないでしょうか。

なので、日本のコリビングの利用者は大きく2パターンに分けられます。自宅とは別の拠点としてコリビングを利用するデュアラータイプと、旅しながら働くアドレスホッパータイプです。

コリビングというライフスタイルが日本にも浸透してくれば、新しい利用方法が生まれてくるかもしれませんね。

日本で利用できるコリビングサービス

日本のイケてるコリビングサービスをいくつか紹介します。

前述のとおり、デュアラーとアドレスホッパーの利用者が多いのもあって、いずれの施設も「旅しながら働く」というコンセプトを打ち出している感じです。

あと、10万円を超えるような海外の利用料と比べて、日本のコリビングサービスは数万円程度と安いです。

安い理由はいろいろありますが、日本中に無数にある空き家を上手に利用していることも特徴のひとつです。

ADDress

“住み放題サービス”の本命に躍り出たADDressの抜かりない提携戦略

4万円で11拠点(順次拡大)に泊まり放題で話題の『ADDress(アドレス)』。

社会問題となっている空き家問題に向き合いながら、旅しながら働きたい人のニーズをうまく捉えていて、クラウドファンディングでの会員募集を順調にすすめています。

ADDressホームページ画像

地方の拠点が多いですが、都心でも利用できるように、同じく泊まり放題サービスの『ホステルライフ』などと上手に提携しています。

ADDressの特徴

出典:http://address.love/

ADDressの代表を務める佐別当さんは約20年シェアリングエコノミーに携わってきたエキスパートで、提携などの戦略のしたたかさがエグいです。期待できます。

“住み放題サービス”の本命に躍り出たADDressの抜かりない提携戦略

HafH(ハフ)

泊まり放題『HafH(ハフ)』のクラファン絶好調…今週のニュースまとめ

長崎を拠点に、全国に拠点を拡大している『HafH(ハフ)』。こちらもクラウドファンディングでの会員募集で順調にユーザーを獲得しています。

月に10日泊まれるプランで3.2万円、泊まり放題プランで8.2万円です。

hafh料金

出典:https://www.makuake.com/project/hafh/

ターゲットなどの路線はいまのところADDressと大差がない印象ですが、僕の周りのアドレスホッパーな人々はもっぱらHafHを支持している印象です。

ハフ長崎「SAI」の共有スペース

ハフ長崎「SAI」の共有スペース

戦略というよりも「場所」や「人」でサービスって選ばれるものですからね。

もっと早く出会いたかった!定額で世界中に住み放題『HafH(ハフ)』

Roam

Roamの共同キッチン

Roamの共同キッチン

Roamはサンフランシスコ、マイアミ、バリ島、ロンドン、東京と世界中に拠点を持つコリビング施設です。

日本の企業ではないのですが、「世界を旅して暮らす」というADDressやHafHがこれから作ろうとしている世界観をすでに完成させているサービスです。

ただ、利用料金は拠点によって変動しますが、月額20万円~45万円とかなり高額。

東京の拠点は六本木にあって、部屋は例によってワンルームです。

Roam東京拠点の部屋

予約カレンダーを見ると、年内は予約できませんでした。人気なのか、諸般の事情があるのかどっちなんだろう。いずれにしてもどんな入居者がいてどんな交流があるのか興味深いです。

日本のコリビングは海外ノマドにとって魅力的?

さて、コリビングについて長々と書いてきました。

流し読みしてくれた方でも気がついたでしょうが、この記事を読んで「海外のコリビング高すぎ」そして「/yellow]日本のコリビング安すぎ[/yellow」この2つの感想を持ったのではないでしょうか。

決して日本は物価の安い国に成り下がった…とか言いたいのではありません。むしろ、視点を変えるとアメリカとかロンドンでノマドやってる人にとって日本のコリビングはコスパ良すぎて鼻血が出るレベルなんじゃないか?と思います。

僕も福岡のド田舎にオフィスを兼ねたアパートを借りて東京からの仕事をもらったりしているので、固定費を抑えながら仕事することの重要性がよくわかります。

日本のコリビングが海外ノマドの皆さんにぶっ刺さって、新しい交流が生まれたらそれはそれは楽しそうです。

この記事を書いた人

MULTINESS編集長。『漂流男子』『働きたくない代表』とか言われている。ライブドア、LINE、サイバーエージェントを経て福岡県糸島市をメインの拠点に東京、名古屋を行ったり来たり。バンコクに拠点作りたい。